青梅駅から旧青梅街道沿いを東に歩くこと5分。住吉神社をすぎたあたりに佇むカフェギャラリーは、「はこ哉」という昭和ノスタルジックな響きの名をもちます。エントランスには、モノトーンなのに手作り感の温かみを感じる、個性的なポストと傘立てが印象的です。

店舗情報 | |||
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電話 | 0428-22-0429 | ||
住所 | 青梅市住江町7 | ||
営業 | 10:00-18:00 | ||
定休日 | 月曜・火曜 | ||
駐車場 | 店舗脇に3台 | ||
最寄駅 | 青梅駅から徒歩5分 | ||
WEB | https://ome-hakoya.amebaownd.com/ | ||
https://www.instagram.com/iwakura.cafeyuba/ |

ここには昭和期に最盛期を迎えた「青梅夜具地」の美しさや技術の高さを伝えたいと、ノート・バッグ・アクセサリーなど身近な物に再生した夜具地グッズが販売されており、青梅駅に訪れた方には必見のスポットです。







かつて青梅は「夜具地」の一大産地であった
「青梅夜具地」とは青梅で織られていた布団用の木綿織物のことです。
青梅は室町時代から織物産業によって賑わってきた歴史があり、江戸時代には「青梅縞」が粋な江戸っ子たちに愛され、明治から昭和時代にかけて盛んに織られたのが「青梅夜具地」。

夜具地の生産地は他に山梨/新潟/富士などありましたが、昭和20年頃の全盛期には青梅産が全国7割のシェアを誇るほど、青梅は夜具地の一大生産地でした。
青梅夜具地は、オレンジや赤といった鮮やかで温かい色彩や、花模様や縞模様など華やかさが特徴です。

ひと手間かけた厳選の喫茶メニュー
店内には喫茶メニューもあります。
オープン当初より都内の名店“堀口珈琲”より取り寄せている豆。オーダーごとに挽いて淹れるので、店内中が心地よいアロマに満たされます。苦味や雑味が少なく、すっきりした味わい。高級豆の香ばしさを味わえる1杯です。


カップはウェッジウッド、アラビアなどが数多く並び、店主がそれぞれお客様にあった器を選んでいるそうです。はこ哉の喫茶メニューはとてもリーズナブルなのですが、その優雅なコーヒーカップで味わっていると、なんだかとても贅沢な心地に…

他にも店主おススメはハニーレモン。生レモンを1/2個絞ったみずみずしい爽やかな甘さ。ホットでもアイスでも炭酸でも選べます。
アイスコーヒーも豆を挽いて淹れるという丁寧さ。シンプルなメニューですが、ひとつひとつにこだわりが光ります。

生まれ育った町の為に、何かできることはあるか
店主の金子さんは、ご主人ともに青梅生まれの青梅育ち。年々寂れていってしまう町の様子をなんとかしたいと思ったお二人は、ギャラリーならできるかもしれないと、ご主人の退職後2004年にオープンされました。
300年前から代々この地に住み続けてきた先祖が家具職人で、「はこや」という屋号で呼ばれていたことが店名の由来だとのこと。
開業する際に「お店の売りとして、何か青梅らしいものを」と目をつけたのが青梅夜具地。まずカフェのティーマットに仕立てました。

金子さんの子ども時代に青梅夜具地の布団はどこの家庭でも使われており、当時の記憶としては野暮ったいイメージだったといいます。
しかし、機屋であった友人宅に長い間眠っていたという青梅夜具地に改めて再会したとき、金子さんは夜具地の魅力のとりこに。

青梅夜具地は江戸時代の青梅縞の技術が継承された縦縞から、格子柄や複雑なグラデーションなどに発展していきました。
「機織り娘さんたちが一反一反縦糸と緯糸を計算して織りこんで、こんな絶妙なグラデーションやチェック柄を何百種類と産み出してきたんですよね。青梅のあちこちにあるノコギリ屋根の小さな織物工場に、こうした高い技術があったんです。」

1999年に青梅夜具地の生産は終了し、すでに処分されてしまったものも多いのですが、この夜具地の魅力を後世に残していかねばと強く思うようになったと金子さんはいいます。

こちらは、はこ哉イチ押しの夜具地で装丁されたノート。
かつて夜具地を織っていた故人の思い出にと、処分されそうになっていた夜具地を使って制作し親戚に配ったことがきっかけで、夜具地のリメイクグッズ商品を次々と生み出していきます。

人気のポーチやぬいぐるみなど種類豊富な夜具地グッズは、縫製が得意な手しごと仲間が5,6人でそれぞれ製作を担当していて、手づくりとは思えないほどしっかりした造りです。

外国人向けのワークショップも開催し、夜具地のタペストリーを作った際、エジプト・カイロ大学から来ていた教授も研究に使いたいと持ち帰ったとのこと。
他にも青梅夜具地のデザイン見本帳を出版したり、近隣の小学校へ夜具地を持参し、デザインの写生や端切れでつるし梅の制作授業を行うなど、地域のこどもたちへ伝えていく活動も精力的に行っています。


はこ哉に集まる人たち

取材中、散歩の途中だというご近所のおばあちゃんや、ほぼ毎日珈琲飲みに来るという方などひっきりなしにお客さんが訪れていて、常連さんたちに愛されている場所だということがわかります。
また、夜具地を広める活動をあちこちで関わっているため、打ち合わせに訪れる方もいて、くるくると忙しい金子さん。

夜具地の座布団を作られている友人の秋本さん。
元々ふとん屋をされていました。化学繊維などが入っていない、純綿(じゅんめん)という綿糸を使われています。
しっかりとした、厚手の座布団です。金子さんとおなじく、「50年も前に、こんなに素敵なものがあったことを伝えたい」という思いで作られています。
青梅駅からも近いので観光客も多く、初めての方には金子さんが夜具地について解説しはじめると、お客さんも思わずいろいろ話しこんでしまうアットホームな雰囲気。金子さんの屈託ない人柄と温かい夜具地色に囲まれた、とても居心地のよい空間です。

「わたしはもう70だけど、残りの人生”青梅夜具地”のためにつぎこみたいの。自分でできることは自分でやる。」
そんな意欲的な姿勢とアイデアで、次々と新たな青梅夜具地のプロモーションに取り組んでいます。
【はこ哉で開かれる教室】
■ポーセラーツ
白い器を自分好みの柄に彩るアート
月に一度の開催(月曜日)連続3回クール
参加費¥1,000(指導料+焼付+珈琲付)+材料費
10:00~、13:30~
■ゲビンデ
ドイツで古くから歴史があるクラフト
月に1度の開催(第3金曜日or土曜日)
ご興味ある方はお店へお問合せください。



小学生を子育て中。
自然豊かな場所が大好きです。
趣味はインテリアを見ること、ウォーキング。