東京都青梅市の北東に位置する"岩蔵温泉郷"。
岩蔵温泉の歴史は、遠く神代の時代にまで遡ります。
日本神話の英雄、日本武尊(やまとたけるのみこと)が東征の折にこの地に立ち寄り、湧き出でる水で身を清め、岩造りの蔵に鎧を納めたことから「岩蔵」の名が付けられたとの伝説があり、「岩蔵禊(みそぎ)の湯」とも呼ばれています。
その岩蔵の地に静かにたたずむ『儘多屋(ままだや)』は、130年を超える歴史を持つ温泉旅館。
体も心もホッと休まる小さなお宿です。
昭和までとても賑わっていた岩蔵温泉郷も時代の変化で、5軒あった温泉宿も今は『儘多屋』一軒となってしまいました。
岩蔵温泉の源泉は、儘多屋の玄関正面にある『湯乃権現(ゆのごんげん)』のお社の下にあります。
江戸時代の文献には、腰や内臓の痛み、骨折や打撲などに効用がある湯治場として、「岩蔵の湯」は知られていたという記述もあります。
こうした伝えのある岩蔵に明治16年、漢方医・儘田長松が旅館として開業したのが儘多屋です。以来、儘多屋は儘田家一族で営んできました。
館内は木のぬくもりがしっかりと感じられる造り、宿のかたわらには木漏れ日の射す小川(黒澤川)もあり、里山ならではの穏やかな空気が漂います。
儘多屋のホームページには、次のようなあいさつ文が記されています。
・館内エレベーター・エスカレーターなど一切ございません
・冬は非常に寒いです
・天井裏にムササビが来ることがあります
・自然いっぱいの山や川の近くの為、気候によっては虫が館内室内に入ってくる場合があります
儘多屋の六代目となる若女将、儘田菜つ美さんは言います。
「大きな旅館やホテルのように、従業員が総出で送り迎えをするようなことは実は苦手で、大仰なおもてなしをするということはしていません。ほどよい距離感と言いますか、お客様の自分時間を大切にしたいと考えているのです」
儘多屋の客室は、古い宿の味わい深さを生かした、木造ならではのよさが際立つしつらい。
現在のご主人である儘多屋の五代目(菜つ美さんのお父さま)は、木工や電気の仕事がとても好きで、部屋の改装や調度品などもご自分の手でDIYされ、どれもぬくもりを感じるセンスの良いものばかりです。
宿の中では季節のお花が丁寧に生けられていて、おもてなしの心を感じます。
「うちの従業員はみんな、花好きなんです。仲居さんの1人が、自分の家の一部屋をつぶして花屋さんレベルで育てていて。だからいつもフレッシュな草花たちを生けています。」と菜つ美さん。
儘多屋のガーデンにも沢山の草花が季節ごとに咲き誇り、そのお庭から摘み取った新鮮なお花たちも館内を彩ります。
ロビーには好奇心をくすぐられる様々なジャンルの本が置いてあり、ソファーで読みふける時間もまた心地よい時間。
儘多屋には女湯と男湯がそれぞれ1つずつ、岩蔵の湯はメタほう酸、フッ素イオン、重炭酸ソーダなどが含まれる鉱泉です。温泉臭さがなく、成分が強い湯ではないので、子ども連れのご家族や肌の弱い人も安心して入浴できます。
湯から出てもホカホカが継続して芯から温まったことが分かります。メイク落としが用意してあったり、幼児のおむつ替え用の台が置かれていたりなどは、女将の気配りが感じられるところです。
※宿泊者数が少ないときには、貸し切り形式とする場合があります
食事は、女将(菜つ美さんのお母さま)と菜つ美さんの妹さんがメインで用意する心づくしの手料理。儘多屋ではそれを「里山料理」と名付けています。
「できる限り地元産の美味しくて安心な食材を使っていきたいので、美味しい食材を作るかたがそばにいてくださるのはありがたいことです」と菜つ美さん。
岩蔵周辺には、地元ではその名を知られた「かわなべ鶏卵農場」を始め、美味しくて安全な野菜作りを実践する若い農家の「繁昌農園」や「KAJIYA FARM」、12年間のドイツでの経験をハーブなどの野菜作りに生かしている「lala farm table」といった、他にはないクオリティの素材を提供する生産者がいて、儘多屋とタイアップしています。
岩蔵周辺には、ホタル観賞(6月)や水遊び(夏)といった季節のお楽しみができる場所もあります。儘多屋では、そうした場所のご案内もしてくれます。
若女将の菜つ美さんによれば、「最近は読書をしたり、散歩をしたりといったことがお好きなかたが増えているように思います。コーヒーを飲んで、ちょっとお酒を飲んで、本を読んで、散歩をして。お花を楽しみにして来てくださる方もいらっしゃいますね」とのこと。
岩蔵周辺の里山エリアは、空気が澄んでいてゆっくりと散策するのには最適な場所です。
岩蔵温泉郷エリアの豆知識が詰めこまれた「岩蔵温泉マップ」は、菜つ美さんが知り合いのイラストレーターと一緒に完成させた力作。このイラストマップを手にしながら歩けば、散歩の楽しさがきっと倍増することでしょう。
ゆったりとした自分時間を過ごしたい方たちが必ずと言ってよいほどに訪れるのが、儘多屋の向かいで運営されている喫茶店「CAFE YUBA」です。名前の由来は「岩蔵」が「湯場」だから。
CAFE YUBAは、木曜日から日曜日まで、儘多屋のチェックアウト時間に合わせて営業がスタートします。
敷地内のオープンガーデンは、季節になると梅やしだれ桜、紅葉などを楽しむことができ、景色を望める窓際の席やテラス席はいつも人気です。
ブックカフェとも言えるほど、店内には儘多屋と同様にたくさんの本も置かれています。
「雑誌系は父、旅系は私、映画系は妹といった具合に、家族それぞれの好みで揃えられています。音楽も自分たちが好きなものを流しています」と菜つ美さん。
CAFE YUBAは、緑豊かな里山風景を目の前に食事やコーヒーを楽しむことができる、とっておきのカフェです。
※新型コロナウィルス感染拡大防止のため、臨時休業やテイクアウトのみの営業になるなど営業状況が変動します。最新の情報は下記CAFE YUBAのSNSをご確認くださいませ。
儘多屋は、宿泊客の半数以上はリピーターという隠れた人気宿です。あちこちに施されたやさしい気配りとほどよい距離感が、「静かに、自由に、自分時間を持ちたい」人にとって“最上のおもてなし”となっていている小さなお宿。ぜひ一度、味わいにきてください。
宿泊料金(1泊2食付き)※おもに金土日祝営業(2022年4月より料金改定予定)
大人 ¥14,520/人(2名宿泊時)~ ※部屋・人数・時季により変動
小学生 ¥8,690
幼児 (食事・布団あり)¥6,820 (食事のみ)¥4,290/¥2,420 (布団のみ)¥3,300 (食事・布団不要)¥1,100
素泊まり
大人 ¥7,150/人(2名宿泊時)~
小学生¥4,400
未就学児¥3,300
乳児¥1,100
乳幼児連れ情報
離乳食持ち込みOK / 子供用椅子あり
設備
ロビー / Wi-fi(ロビー周り) / 湯沸かしポット / お茶セット / 冷蔵庫 / エアコン / 金庫 / 洗浄機付トイレ(トイレ付きの部屋のみ)/ ドライヤー
アメニティ
浴衣 / フェイスタオル / バスタオル / 歯ブラシセット / カミソリ / ヘアブラシ
浴室
シャンプー / コンディショナー / ボディソープ / 洗顔料 (メイク落とし)/ ベビーソープ / ドライヤー / 化粧水 / 乳液・コットン / 綿棒 / ハンドソープ / おむつ替え用台 / 赤ちゃん用おしりふき / ビニール袋
儘多屋 基本情報
住所 | 青梅市小曾木5-3140 |
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電話 | 0428-74-4221 |
チェックイン | 15:00 |
チェックアウト | 10:00 |
宿泊可能人数 | 2名からOK(1名での予約は営業日当日または直前に空きがある場合承ります) |
現地でのお支払い | 現金 / クレジットカード(JCB・VISA・MASTER・AMEX) / PayPay |
入湯税 | ¥150 |
予約方法 | 電話(木・金 10:00~17:00 / 土・日・祝 10:00~18:00) メール(info@mamadaya.com) ※月~水はメールのお問い合せのみ対応(返信には多少お時間いただきます) |
執筆者:村野公一(むらのきみかず)
ニックネーム:Moose(ムース)
よろず企画ごと引き受け業、イベント等の制作・演出業、そして、もの書き業と講師業、しています。我が町・青梅のよい情報をいろいろな形で発信するおへんなし集団「NPO青梅まちづくりネットワーク」の代表理事や、贈答品・古美術品などを扱う「貴宝商事」の代表もしています。青梅とその周辺をうろうろしながら、いろいろなこと、やっています。そうそう、音楽が好きで、ピアノも弾いています。祭りも好きで、お囃子と江戸研究もやっています。……っと、そんな感じです。
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