青梅駅から住吉神社へ向かって4分ほど歩くと、JR青梅線の電車が下に走る陸橋の先に、夫婦で営む小さな喫茶店があります。
昭和初期に建てられた、元医院の一軒家。
昭和初期のモダンな風情残る店内。
窓辺から目下に走る電車、年代物の扇風機にベースアンプ、この喫茶店になる前から備えつけられていた暖かみのあるシーリングライト。調度品の一つ一つに物語を感じます。
大きな木のテーブルには季節の花。古いスピーカーから流れるジャズ、三方の窓からは心地よい風と緑が。
どこを切り取っても画になる、映画の一コマのような空間に日常の喧騒を忘れます。
1990年にこの地に開業してから30年。
こじんまりとしたお店ながら、都心からここを目指して青梅へ来たという訪問客も多く、知る人ぞ知る青梅の名店です。
一番人気のカレーは寸胴鍋で8~10㎏の玉ねぎを2日間かけて半分の量になるまでじっくり煮込みます。これで約30食分とのことなので、ひと皿に玉ねぎ1個弱分濃縮されていることに。
手間ひまをかけて最大限に引き出された玉ねぎの甘味と旨みが、自慢のカレーの土台となります。スパイスはガラムマサラとコリアンダー、クミン、カルダモン、グローブ等を使用。
中でも特筆すべきは、こだわりの玄米。
使用されるお米はすべて玄米で、合鴨農法により栽培されお米の旨味が増す遠赤外線乾燥された無農薬のものを秋田の農家から取り寄せています。
合鴨農法とは、カモ達に雑草や害虫を食べさせ、極力農薬を使わず生態系を守るという有機農法のひとつ。お取り寄せしている農家では肥料は米ぬか、たい肥、炭粉等を使用。除草機械、人力等で雑草を抑えて栽培しています。
ご主人の山田勝一さんは大坂のご出身。上京後しばらくは都心に在住していました。
山田さんが青梅に来ることになったきっかけは、青梅市のオーガニックフーズショップ「KIVA」のオーナーから、店舗併設レストランの店長をやらないかと誘われたことでした。それを機に育児する環境にもよいと青梅へ移住することに。
国分寺の「でめてる」(自然食レストラン)にてスタッフ経験のある奥様と共にレストランを始めます。
当時は青梅市野上町にあったその自然食レストラン(現在は閉店)では、すべてKIVAの食材を使用したメニューを提供。今ほど玄米がメジャーでなかった80年代に、玄米をはじめとしたオーガニックなメニューが充実していて、筆者の幼き頃に玄米デビューしたのも実はこのお店。
ほのかに醤油味の効いた香ばしいピラフや焼きおにぎりのもっちりした玄米の味に30年前の記憶が蘇ります。
ピラフやおにぎりに添えられるお椀は、料理により具も変えているという丁寧さ。
Menu | |
野菜カレー(サラダ付)※ | ¥850 |
チキンカレー(サラダ付)※ | ¥950 |
焼きサンドウィッチ※ | ¥550 |
トースト※ | ¥350 |
※印はセットドリンクあり | |
焼うどん | ¥700 |
コーヒー・紅茶・ミルク(HOT/ICE)・ジュース各種 | ALL ¥400 |
番茶(梅干しorクッキー付) | ¥400 |
カフェオレ(HOT/ICE)・チャイ・ホットアップルジュース・レモネード・ラッシー・グラスワイン他 | ALL ¥500 |
ビール(エビス・コロナ・ハイネケン) | ALL¥600 |
ケーキやクッキーはすべて自家製。甘さ控えめで原材料を生かした素朴な味わいは当時と変わらず。子供にも安心して食べさせられます。
クッキーのみ購入も可能、ケーキは300円でテイクアウトOK。
使用する食材は主に生協や、KIVAに仕入れているメーカーからもお取り寄せ。
ドリンクに使用するレモンは国産、パンは天然酵母使用のものを。
コーヒーは自家焙煎珈琲店「カイルアコーヒー」(国立市の老舗珈琲専門店)の深煎り豆を毎朝丁寧にドリップ。これもメニューには載らない隠れたこだわりです。
お店の看板を始め、店内にはさりげなく交流のあるアーティスト達の作品が。お店の飾らない雰囲気の中にそっと溶け込んでいます。
外観の看板は市川幸平さんにお願いしたもの。
SF小説好きのご主人のお気に入りで、店名の由来でもあるロバート・A.ハインラインのSF小説「夏への扉」。
その小説に登場する、ピートという猫を想い起こします。
絵本作家の山口マオさんとご主人はかなり前からのご縁だそうで、青梅宿のイベントにも毎年山口マオさんがゲストとして招かれます。
開店当初は店内で毎年ライブイベント等が多く開催され、著名なミュージシャンやアーティスト達が訪れています。詩の朗読ライブに谷川俊太郎さんをお招きしたこともあるとのこと。
店内にはご主人が趣味である骨董市で買い付けてきた器たちが並びます。
「見つけるとつい買ってしまうんですよ」と、器には目がないというご主人。
高幡不動や世田谷のボロ市や、ご実家である京都で買い付けてくることも。
お店の前の坂道を上っていくと数分で、鉄道公園や永山公園へ。永山ハイキングコースは森の中のゆるやかな散歩道が続き、見晴らしのよい隠れビュースポットもあり人気です。
駅から歩いてスグのリトリートスポット。
ちょっとお疲れのココロとカラダにも染みわたる、静かで穏やかなとっておきの場所です。
(この内容は2020年6月現在のものです)
夏への扉
電話: 0428-24-4721
住所: 青梅市住江町16
営業時間:10:00-18:00
定休日: 火曜
駐車場: なし(近隣に有料駐車場あり)
最寄駅: 青梅駅から徒歩4分
WEB: http://www008.upp.so-net.ne.jp/natsutobi/
執筆者:ERI
青梅に越して早2年目。今年も真夏に夏への扉さんで自家製ラッシー飲む日を心待ちにしています。