目 次
ケーブルカーを降りて徒歩8分。御嶽神社へ向かう道すがら現れる宿坊集落のひとつに片柳荘があります。
片柳荘はほんの2年前まで、講社(信者)をもてなすための純粋な宿坊でした。今では一般の観光客も受け入れるようになり、今は武蔵御嶽神社の神主でもある13代目の片柳政光さんを当主として、母親で女将のシゲ子さんと若女将の美江さんが片柳荘を切り盛りしています。
玄関には、見上げる大きさの畠山重忠像が。
この畠山重忠像は「長崎平和記念像」の作者としても有名な彫刻家、北村西望が制作したもの。武蔵御嶽神社の宝物殿に畠山重忠像が建てられた際、周辺の宿坊などのために大きさの違うものが十数点寄贈されました。
こちらも北村西望の書で、他にも北村西望由来のものがいくつもあります。
書の署名には百弐歳と書かれ(北村西望は享年102歳)、晩年まで親交がありよく訪れていたことが分かります。
片柳荘の講社は、埼玉の川越や新座、東久留米などの農家さんたち。毎年春ごろになると必ず武蔵御嶽神社へ参拝に、それぞれ団体で泊まりに訪れます。
また企業の慰安旅行の宿としても長年利用され、この片柳荘で生まれ育ったシゲ子さんは「常連のお客さんたちとはお互い若い頃からの、本当に長ーいつきあいなのよ」と話します。
館内には大きさの異なる客室が4つ。そのほかに食事用のお部屋が1つと、大広間が1つあります。
各部屋には先代が収集した骨董品や、講社の方がお供えした日本人形などが飾ってあり、タイムスリップしたような懐かしい気持ちにさせてくれます。
宿の周りは夜になると真っ暗になるので、キャンドル風LEDライトのほのかな明かりを見ながら、ゆったりとした時間を過ごすのにもピッタリです。
大人2人でもゆったり入れる大きさの浴室。御岳山の軟らかい水とジェットバブルの細かい泡が身体中を包み、登山後の脚やデスクワークで疲れた背中を心地よくほぐしてくれます。
シゲ子さんのお母様は数年前94歳で亡くなるまで宿坊のすべてを取り仕切っていて、きんぴらが天下一品とうたわれた名物女将でした。「母が料理から何から全部やっていたから、引き継いだとき私達は全部イチからで大変だったのよ~」とシゲ子さん。
旬を意識したお料理は上品なお味であったり、主菜は体を動かしたあとには嬉しい濃いめの味付けであったりと計算され尽くしています。御岳山の山肌に面した畑で育った新鮮な野菜が嬉しいごちそうです。
また食前酒の果実酒がとっても美味しくて。時間をかけて発酵させた甘さがじんわりと体に染み渡ります。
さらに注目していただきたいのがデザート!
スイーツづくりが趣味という美江さん特製のプリンは、生クリームたっぷり配合で極上のなめらかさ。バニラビーンズのつぶつぶ感が楽しく、香り高い逸品です。
朝食はヘルシーな和食中心の献立。御岳山名物の手作りこんにゃくは、市販のものとは別物! 優しい歯ざわりとクセのないお味をぜひ生姜醤油で味わっていただきたいです。
季節や仕入れによってメニューが異なります。これが山を登る楽しみになると言っても過言ではありません。
片柳荘では日帰りランチも予約制(3日前まで)で利用できます!
自慢の刺身こんにゃくや山菜天ぷら、川魚など季節の味に舌鼓。日帰りでも宿坊で山の恵みを堪能しつつゆったりとくつろぐ、新たな山の楽しみです。
ランチでも手作りこんにゃくは味わえます。御岳の天然水で仕込まれた感動的な美味しさをどうぞ。
こんにゃく芋は御嶽山の畑で採れたものか、下仁田から取り寄せたもの。前の年の秋ごろ収穫して使います。夏まで生芋はもたず冷凍するので、生の芋で作った新鮮なこんにゃくを味わうなら4月半ばまでがおすすめです。
滞在中、片柳荘の皆さんが親密に御岳山のことを色々教えてくださったり話が尽きないので、まるで親戚の家に遊びに来たかのよう。ひと晩すごすだけでなんだか“自分の居場所”として、また帰ってきたくなるような居心地の良さを感じます。
とても明るくざっくばらんなシゲ子さんは、女将さんと呼ぶと嫌がります。「女将なんかじゃないハンパもんだから!シゲちゃんでいいから~」と謙遜して言いますが、出迎えと見送りの際は必ず手をついて丁寧に挨拶してくださったり、先代女将から引き継いだ細かなおもてなしを随所に感じます。
御師の政光さんは武蔵御嶽神社に毎日お勤めされていますが、宿坊にいるときは珈琲担当。レトロなミルで豆から手で挽いて珈琲をもてなします。
妻の美江さんは洋裁が得意で、手作りコースターを朝の珈琲に添えて、お土産にもたせてくださいました。
お客様ひとりひとりを丁寧にお迎えしたいという理由から、1日に受け入れる個人の宿泊客は最大2組です。
(学生や幼稚園などの合宿の貸切利用もあり、大人なら最大30人、子供なら最大80人が泊まったことも)
「できる範囲でお客様の気持ちに寄り添っていきたい。『また来るよ!』といってもらえるのが何よりも励み!」とシゲ子さんは話します。昔から講社を迎えてきたからこその、距離が近いおもてなしに心が温まります。
おすすめの季節を伺うとやはり春と秋だとか。4月には桜とつつじが咲く花盛りの御岳山を、秋には落ち葉が風に舞う神秘的な御岳山を見ることができるそうです。夏も平地に比べれば格段に涼しく、のんびり過ごせます。
片柳荘での宿坊体験を目的に御嶽山へ足を運んでみるのはいかがでしょうか。
手作りこんにゃく作り体験(要事前予約)
1人1,500円
こんにゃく芋から作る本格さしみこんにゃく。シゲ子さんから手ほどきを受けながら作ります。
作ったこんにゃくはお土産にお持ち帰りできます!
宿泊料金(1泊2食付き)
大人 ¥10,000/人(2名~)
小学生 大人料金の70%
幼児 (食事・布団あり)大人料金の60% (布団のみ)¥1,100 (食事・布団なし)無料
素泊まり
なし
乳幼児連れ情報
離乳食持ち込みOK / 子供用椅子あり / ベビーベッド無し
設備
カラオケ(有料・要予約) / Wi-fi / 保温ポット / お茶セット / エアコン / 石油ファンヒーター
アメニティ
ハミガキセット / カミソリ / タオル / バスタオル / 浴衣
浴室
ハンドソープ / ボディーソープ / リンスインシャンプー / 洗顔料 / ドライヤー / 化粧水
片柳荘 基本情報
住所 | 東京都青梅市御岳山56 |
---|---|
ケーブルカー御岳山駅から | 徒歩8分 |
電話 | 0428-78-8461 |
チェックイン | 15:00 |
チェックアウト | 10:00 |
宿泊可能人数 | 2名からOK |
現地でのお支払い | 現金のみ |
暖房費等 | なし |
予約方法 | 電話(8:00~22:00) じゃらんnet |
※掲載内容は変更の可能性があります。(2021年5月 現在)
執筆・撮影:たなかもみこ
福生生まれ、青梅育ち。普段はSNSマーケティングの会社でアシスタント業務を行いながら、フリーで活動しています。
20年間青梅にいましたが、もっぱらインドア派。取材を通して地元・青梅の魅力を改めて感じています。
アイコンは青梅で拾った実家の愛猫です。