ディズニーが大好きで、よく「ありのーままのーすがたーみせーるーのよー」と歌っている男の子のお母さんから相談がありました。親御さんは歯磨きをさせたい一心です。でも、男の子はそんな親御さんの気持ちはつゆ知らず、まるで鬼ごっこのように逃げ回ります。毎回そんな格闘をしていると親御さんもヘトヘトです。
こんなとき、本人の意思を後まわしにしたままだと、親御さんがどんなに頑張っても、いつまでも平行線のまま。
ポイントは“自分の為に自分で歯磨きすることを決める”ということです。
この男の子は2歳児ですが、子どもは2歳頃になると大人の言うことも理解ができ、本人の自我も成長しています。ですから「ムシバイキンが来ちゃったら痛い痛いになっちゃうけど、どうする?」など、本人の意思を確認することに重きを置いたやり取りをします。
決して大人の一方的な指示(虫歯にさせたくないという気持ちから)では無く、自らの意思で歯磨きをするという行為が大事です。これらの行為を何度も重ねていくことで子どもは歯磨きを生活の一部として認識します。
まだ子どもが0歳児で歯が生え始めた頃であれば歯磨きを「遊びのひとつ」として行います。口の中は誰でも急に触られると違和感を覚えるもの。“歯磨き”=“いやなもの”にしない為には、とにかく”口の中で遊ぶ”のです。
シャカシャカシャカッと少し早く動かして笑わせてみたり、その子の好きな歌を口ずさみながら、そのリズムに合わせて歯ブラシを動かしてみたりなど楽しい雰囲気の中で行うことを繰り返します。そうやって口の中に入れられることに慣れていけば、その後の歯磨きに苦労しなくてすみます。
しかし、それでもなかなか歯磨きをしてくれないときもあります。そんなときは親御さんの表情・仕草で真剣さを伝えます。メラビアンの法則などで提唱されているように大人でも相対する人の話す内容(言語情報)よりも表情(視覚情報)や声のトーン(聴覚情報)からの情報が判断材料として大きく影響します。小さな子どもにとって、親御さんの表情・声のトーンは尚更大きくインパクトがあります。子どもは親御さんの心配そうな顔や、深刻そうな顔をすぐに汲み取ります。
実は、この表情を読み取る能力は生後6ヶ月を過ぎると発達しますので、親御さんがこれは大変なことになるぞという表情で先ほどのセリフを投げかけると、“歯磨きをしない”=“大変なことになる”と子どもも真剣に思うわけです。
子どもが「やっぱり歯磨きするー」となったら、歯磨きをしないとどうなるのか、ママもパパも歯磨きを大事にしているよと歯磨きをしながらまた優しく話してあげます。そうすることで少しずつ自ら考え、決める意思が育まれていきます。
親御さんがさせようさせようと一生懸命になればなるほど子どもの意思が置いてきぼりになることはよくあります。
予防接種など、お医者さんで注射をしないといけないのに病院の駐車場に着いた時点で大声で泣く子、注射を見た途端に膝から逃れようと暴れて泣きじゃくる子に途方にくれたことはありませんか。
これは子どもが“注射をする”ということを納得していないために起こる行動です。何も言わずにお子さんを病院に連れて行き、パッと注射を終わらせてしまおう、泣いてしまうだろうから言わないでおこう・・・そんな作戦もあるかと思いますが、勘の良いお子さんはその流れに違和感を覚え、普段とは違う景色にどんどん不安が募ります。そしていきなり聞こえた「注射」の声で、ついに爆発するわけです。
この場合も病院に行く理由、注射をする理由、どれくらいかなど細かく説明をしましょう。
「○○にならないように注射をするよ」、「1回で終わるからね」など短いセンテンスで伝えます。お子さんに親御さんの意図が伝わると「あーそうか、注射をしないとゴホンゴホンになっちゃうもんね」と納得してくれます。
納得し、注射をすることを決めたお子さんは注射器の針を見ても、チクッとされたとしても少し涙は出るかもしれませんが、泣いて暴れるまでには至りません。
さて、今回は子ども自身が納得し、自ら決めるために周りの大人がどう接するかということをご紹介させていただきました。大人である私たちも「明日は早いからもう寝よう」とか、自らが必要性を納得し、決め、行動に移します。子どもも私たち大人と同じく考え、すっきり納得すると行動出来るのです。
子どもは納得さえすれば適応能力が非常に高く、歯磨きのように新たに習慣化することが可能です。
しかし大人の場合、子どもに比べて知識や誘惑が多く、自分自身を納得させるためには相当数のエビデンスが必要です。
きっと私のダイエットも習慣にならないのは未だに自身がどこかで必要性を充分に納得出来ていないからなのでしょう。
執筆:鈴木美貴子
青梅市在住 35歳
現在4歳児男の子の母をしながら保育園を運営
内閣府主幹 企業主導型保育事業 どろん子の森(青梅市畑中3-889-1)
URL:https://doronkonomori.com
保育士 保育心理士 ガイドヘルパー