スーパーや八百屋さんで、野菜を買うことが多い現代。普段、野菜を作った人から直接買うことはあまりないのではないでしょうか。野菜を作る農家さん側としても、自分で直接売るよりも、業者にまとめて納入する方が手間も少なく効率的です。
そんな中でも、「地元で、丁寧に、食べてくれる人の感想をちゃんと聞きながら、野菜を作って売りたい」…こんな熱い思いを持った若手農家の集まりが、青梅にあります。
「農家自ら手渡しする野菜」にこだわる青梅の農家集団、東京NEO・FARMERS青梅グループです。
東京NEO・FARMERS(以下ネオファーマーズ)とは、都内で新規就農した人や新規就農を目指す人、様々な立場の応援団などが集まり2012年9月に設立した現在80名ほどのグループです。その中から青梅で就農しているメンバーで「青梅グループ」を結成。
東京ネオファーマーズのお野菜は、いなげや福生銀座店、羽村富士見店、ジョイフル本田瑞穂店に、ネオファーマーズの専用棚があります。
また、シズラー有楽町店のサラダバーに専用コーナーも設置されています。
あまり知られていないことですが、実は青梅の土壌は西多摩近隣の土地と比べても良質なのだそうです。黒くてふかふかな土は有機物が豊富な証拠。水はけがよく、火山灰と有機物がほどよいバランスで、野菜が元気に育つ土地だとか。
青梅はあちこちに湧き水が多い地形。山々に降り注いだ雨水がゆっくりと濾過されて、良質な水が青梅の土を潤しているのかもしれません。
そんな青梅の土地を選んで就農した、経歴も様々で個性的なメンバーをご紹介していきます。
青梅市藤橋地区で三代続く農家に生まれた築地さん。「いずれ継ぐ時がくるから、まずは土から学ぼう」と、農業試験場の有機農業堆肥センターへ勤務。2018年に本格的に農業を引き継ぎました。青梅グループの活動が「岩蔵マルシェ」という直売所から始まったのは、築地さんの土地や人脈があってこそだったとのこと。
「農業の昔ながらの暗いイメージをくつがえしたい」と語る築地さん。いつも冗談をとばして笑いの中心にいるのは、第一に和を重んじ、みんなで農業を楽しもうと考えているから。トマト、ミョウガ、ナス、ヤーコンなど多品目を栽培しています。
もともと小平出身の繁昌さんが、自然豊かな青梅の地を選んで就農したのは、青梅ならブランド野菜を確立できるかもしれないと思ったからだとか。
栽培のこだわりは、「野生児のように育てる」こと。野菜が根をしっかりと張って、本来の強さを発揮できる環境にしてあげると、味が濃縮していくのだそうです。
またバターヘッドレタスやおかわかめなど、あまりスーパーでは見ないカラフルで多様な品種を栽培。
農園では農業体験・研修の受け入れや、宅配なども精力的に行っています。新規就農を目指す人に講義もするというマルチな次世代農家さん。人脈がひろく新たな販路をどんどん切り開いていく頼れる開拓者です。
いつも笑顔で元気印の加藤さんは、13代続く農家の跡取り。物心ついたときから農家として働くことを意識していましたが、まず栄養士の資格を取り、保育園の栄養士として働いていました。園で食育を子ども達に行ううちに、改めて食の大切さ、野菜の大切さ、農業の大切さを再確認したといいます。
2018年4月に就農することを決意し今は親の畑を手伝う傍ら、そのまま継ぐのではなく、新しい販路やビジネスの方向など自分らしい農の道を模索しています。予期せぬ天候に悩まされながらも収穫した時の達成感がたまらない、とやりがいを語る加藤さん。野菜や原木キノコ、米などを栽培しています。
KAJIYA farm https://kajiyafarm.jimdofree.com
奥園さんは、12年ドイツの花屋でフローリストとして働きマイスターの資格も有するという異色の存在。オーガニック野菜やハーブや花が身近にある生活やそれらを栽培する農業への思いが強くなり、約2年間の研修を経て2019年6月に青梅の富岡地区で就農しました。
「自然や植物を相手に向き合えること、農業を職業にできることに幸せを感じています」と語る奥園さん。
化学肥料や化学農薬を使わず、土壌や自然本来の力を最大限に生かした農法で、トマト・ルッコラなど定番野菜から、ディル・ローズマリー・エディブルフラワーなどを栽培しています。
花束やアレンジ、ブライダルの装飾など前職の経験をいかしたワークショップも企画していきたいと意欲的に語ります。
lala organic farm https://lala.organic/
2019年夏に就農したばかりという川崎さんは青梅出身。もともと舞台役者で、その後アウトドア関連企業に勤め、BBQやキャンプ設営はプロフェッショナル。イベント企画に長けている川崎さんは、これから農体験などに力をいれていきたいネオファーマーズにとって期待の新人です。
マルシェでも少しずつ野菜を出し始め、お客さんに野菜を説明するのがすでに板についている、頼もしい存在です。
他にも、家具屋から農家へ夫婦そろって転職した人、循環型社会につながる農業をやりたいと40代で農家へ転身した子育て真っ最中のパパ、エンジニアから観葉植物栽培へ就農した人など、個性あふれる新規就農者たちがぞくぞくと仲間に集まっています。
それぞれの想いがつまった野菜たちは、毎週金曜16-18時、小作駅南口すぐの(株)アネストショールーム「ココスム」にてトラック販売しています。(2019年8月現在。季節によって曜日・時間帯は変動します)
小作駅からすぐの場所なので、帰り道に通りかかった方々が足をとめます。スーパーではお目にかかれない面白い野菜たちも豊富に並び、新鮮な発見がある場所です。
メンバーが交代で店頭に立ち、おススメの食べ方などを伝えながら販売しています。
マルシェに立ち寄った赤ちゃん連れのママに話を伺うと「離乳食が始まったので、できるだけいいお野菜が欲しくて。今までほうれん草は食べなかったのに、こちらのモロヘイヤなら食べてくれるんです」と毎週買いに来ているそう。
ふだんから生協で有機野菜を取り寄せているというシニアの方は「こんな近所で農家さんから直接買えて嬉しいわ」と話していました。
一番やりたいことは「直接手渡したい」ということ。特に地元の青梅のひとへ。地産地消の実現です。
まだスタートしたばかりの若手集団なので、まず売り先を見つけることから始めている状況ですが、協力しあいながら少しずつ前進しています。
<その他の直売スポット>
・青梅市内イベント、マルシェへの出店
・コンコース内「拝島マルシェ」:毎月第2・4土曜日の15時から18時
・赤坂見附「東京農村」、東京アグリパーク(新宿駅徒歩4分)年に数回
鮮度抜群の野菜をご近所に届けたい!という若手農家たちは、とにかく和気あいあいと仲が良く勢いがあり頼もしく感じました。これからさまざまな農体験企画を計画中で「麦から作るビール造り体験」や「芋掘り体験」など少しずつ始まっています。
今後のイベント告知にぜひご期待ください。
撮影:青梅フォトクラブ 石井
東京NEO・FARMERS青梅
毎週金曜 16:00-18:00
@ココスム駐車場(奥多摩街道沿い、小作駅南口徒歩2分)
ぜひお越しください!