YOGAセラピー主宰 こあらいのぶこ
2018年にタイ北部の洞窟の中で遭難した、サッカーチームの少年たちを覚えていますか?
狭く暗い洞窟内に、11歳から16歳のサッカー少年たち12名とコーチ1名が、食べ物もない状態で2週間以上閉じ込められ、ダイバーたちによって救出されるまで15日間かかりました。
ベテランダイバーでさえ1人命を落としてしまったほど過酷な水中洞窟(約4km)を、少年たちが1人残らず生還できたことは、救助のプロ達の誰もが「奇跡」だといいます。
ダイビングの経験どころか泳げない子もいたという少年たちには極めてリスクが大きく、水がひくまで4ヶ月洞窟で待機する案もあったほどでした。
なぜ、このとき全員生還という「奇跡」が起きたのか。
あまり大きくは報道されていないのですが、少年たちは救助を待つ間、不安や恐怖に襲われパニックにならないよう、コーチの指導のもと「瞑想」をしていたのだそうです。
25歳のコーチは、少年時代に仏門にいた時期があり、瞑想を心得ていました。
遭難9日後に無事発見されたとき、泣いたりわめいたりせず、みんな落ち着いていた様子であったことを、発見したダイバーも、録画をみた少年の母親たちも大変驚いたのだとか。
スタンフォード大学医学部のデイビット・シュピーゲル教授はニューヨーク・タイムズに対し、
「恐れに対して戦うのではなく、まるで嵐が通り過ぎるのをじっと待つように、怖い思いやネガティブな考えをやり過ごすことが瞑想で可能になる。」
と、閉じ込められた人が心の健康状態を保つのに瞑想が役立つ可能性がある点について説明しました。
(ニューズウィーク日本版より)
狭くて真っ暗な洞窟の中、食べ物もなく救助を待つのは、大変な思いだったことでしょう。
不安や恐怖、後悔の念に襲われ、泣き叫ぶ子が現れ、パニックになることは大いに考えられ、そうなると体力も消耗し、全員の生還は難しくなっていたかもしれません。
しかし少年達は、コーチの指導のもと瞑想をし、心の平静さを見失わずに、最良の状態で過ごすことができました。
この救出劇の最大の成功理由は、少年たちの驚異的な精神力にあった、と多くの専門家が語っています。
心を落ち着かせることで、起きている現実は変える事はできなくても、現実を受け入れる心の許容量が増え、冷静な判断ができ、それによって状態がよりいい方向へ変わっていったのです。
つまり
「今や未来を自らの手で変えていった」
それが瞑想のチカラです。
瞑想は、日々のストレス解消や脳の疲労回復にも効果があるといわれています。
最近では、IT企業などの大手企業が社内活動に瞑想を取り入れているという話をよく耳にしますね。
取り入れた会社では実際に、ストレス軽減効果、仕事の効率の向上、集中力の向上、人間関係の改善などに効果が現れているようです。
感覚的に効果が現れているだけではなく、昨今の研究によって、化学的根拠に基づいても効果があることが分かってきています。
例えば、瞑想をすると、脳の前頭前野が休まるため、記憶を司る海馬の機能が回復し、認知機能や集中力が向上する効果や、ストレスを受けた時に分泌される「コルチゾール」が減り、「オキシトシン」という幸せホルモンが分泌されることも分かっています。
これにより、リラックス効果の向上、うつや不安の緩和、睡眠の質の向上も期待できます。
イライラ、ムカムカ、ウツウツ・・・
ネガティブな感情がどうしても自分でコントロールできずに自己嫌悪…ということはありませんか。
やってしまった事を後悔してみたり、こうなったらどうしようなんて考えて、先のことが不安になったり・・・
そのような、後悔、落ち込み、心の不安の解消にも「瞑想」がオススメです。
瞑想は、「思考」や「感情」で揺れ動く、心の波を静め、冷静さを取り戻すのにとても役立ちます。
瞑想の歴史は、今から約5000年前のインダス文明にその起源をみることができます。
仏教の開祖であるブッダは、今から約2500年前にヨーガの瞑想法を実習して悟りを得たといわれています。
その教えがインドから中国に伝わり、日本には鎌倉時代に禅として伝わりました。
このように、古の時代から意識変容や悟りの実現のために瞑想は行われてきました。
ストレスフルな現代社会を生きる私たちにとって、悟りの実現、とまではいかなくても、瞑想は日々のストレスを減らし、心穏やかに過ごすためのチカラとなってくれることでしょう。
チカラを得るためには、なにより実践です。
歴史があるだけに瞑想には様々な方法がありますが、まずはシンプルなものから始めてみましょう。
- 床でも椅子でも、姿勢を整えて安定して座ります。
- 目を閉じ(あるいは半眼で)、呼吸に意識を向けます。
今、自分は息を吐いているのか、吸っているのか、今に意識を向け続けてみましょう。思考や感情に気を取られているのに気づいたら、また呼吸に戻ります。呼吸している自分を、客観的に観察しながら行うのがポイントです。
最初は3分程から始め、徐々に増やしていきます。
なるべく毎日行ってみて下さい。
なにか変化や気づきがあったらメモを取ることをオススメします。
・思考や感情のコントロール
・冷静さを取り戻す
・ストレス軽減効果
・仕事の効率、集中力の向上
・人間関係の改善
・リラックス効果
・うつや不安の緩和
・睡眠の質の向上
・自己客観性が身につく
この他にも様々なチカラが期待できますが、自分は何を改善したいのか?それを意識化することも大切です。
瞑想は少々根気も必要ですが、実践して自分自身のチカラで得たものは、必ずや一生モノになることでしょう。
執筆者:こあらいのぶこ
19歳でヨーガを始め、ヨーガのあとの心の静けさにいつも感動していたのを覚えています。弱かった胃腸も丈夫になりました。
結婚・出産でお休みしていた時期もありましたが、出産後の体調不良をきっかけにヨーガを再開。不調も改善され、三男が幼稚園へ入ったのを機に、ヨーガの哲学的な部分を勉強したく、ヨーガ・ニケタンの門を叩きました。以後、木村慧心氏に師事し「ヨーガ療法」「伝統的ヨーガ」を学んでいます。
ヨーガ教室では、ヨーガの智慧に基づいた体や心の使い方、物事の捉え方などをお伝えし、心身共に健康で幸せな人生を送るための、体作り、心磨きをしております。