店内は和と洋が柔らかく交じり合ったような、調和のとれた空間。どこを切り取ってもフォトジェニックな内装や小物たちに、店主のセンスを感じます。
ここに並ぶパン達はすべて、ルヴァンリキッドというライ麦由来の天然酵母で作られています。天然酵母とは果物や穀類などに付着している酵母菌を、その素材と水だけでゆっくり培養させて発酵力をつけたもの。
発酵力の強いイーストを使うよりも、天然酵母は発酵力が弱く発酵に時間がかかります。その分、小麦粉本来の香りや味わいが強く出てくるのだとか。
天然酵母も仕入れて使うパン屋さんが多いのですが、nocoでは酵母から仕込んでいます。ずっと種継ぎをしながら自家培養させていくという究極の手作りパンなのです。
一般的に天然酵母で製パンすると食感が重たくなりやすいのですが、ルヴァンリキッドは日本人好みのフワフワ食感になるんです、とパン作りを一手に担う佐藤えり奈さんはいいます。
一番人気のパンドミ(山形食パン)は、小麦粉は北海道産ゆめちからを使いしっとりもっちり。焼くと外はカリッと中はふんわり食感になるのでトーストがおすすめだとか。国産きび糖・カンホアの塩・よつ葉バターといったこだわりの材料を使います。
酵母は生き物なので、温度管理がかなり難しく手間もかかります。ただえり奈さんはその手間を楽しむかのように、クリームやジャム、あんこまで自ら仕込んでいます。
「もの作りがとにかく好きなんですよね」
たとえば体調が悪くても、パンを仕込みだすとアレなんか元気になってきたかも、ということもあるほど、粉を触っているのが好きな時間だそうです。
思わずコレ食べたい!と手にとってしまう可愛らしいパン達。さっそくコーヒーと一緒にいただきました。コーヒーはカフェマニアにその名を知られるねじまき雲の珈琲。青梅駅の近くに焙煎所があります。
個人的にはバナナとクリームチーズのブリオッシュにとりこです。ふんわりリッチなブリオッシュの中に甘いバナナとなめらかなチーズが溶けあって幸せな気持ちに。
ピッツァは自慢のパンドミの上に近隣で採れた野菜が彩りよく乗ってサックリとした食感。どれも美味しくて他のパンもお土産に買いたくなります。
オーナーのご夫婦の、もともとのお仕事はグラフィックデザイナー。えり奈さんは出産を機に仕事を辞めてから、こどもに食物アレルギーがあったことで食に関わる仕事を選ぶようになります。そのうちパン屋を開業したいと長年夫婦で夢をあたため続け、ここ青梅にたどり着いたとのこと。
この場所に巡り合ったのは、デザインを学んでいた時代の恩師が青梅在住だったことがきっかけでした。
エントランスのガラス引き戸を前の借主の家具屋さんに作ってもらい、家具を購入した古道具屋さんに壁塗りを一緒にやってもらうなど、いろいろなご縁がnocoを創っていきます。
ねじまき雲のコーヒーも、この恩師からのご縁。
コーヒー教室にも通ったことがあるほどマニアであるえり奈さんが、「香りとコクが全く別物」と惚れこむ、ねじまき雲のコーヒー。ねじまき店主直伝の淹れ方で丁寧にドリップして提供されます。
青梅で開業してから、いろんな方との出会いとその繋がりが一番楽しいとえり奈さん。
年に1度、「のこいちば」という、魅力的な古道具・木工・雑貨が集まりライブも楽しめる大人なマルシェを主催するなど、年々拡がっていくつながりを楽しんでいます。
成木で自然農を営む「賢治の農学校」のお野菜が隔週で入荷されたり、原材料の卵はかわなべ鶏卵農場のものなど、地元のこだわり食材も積極的に使っています。
店名のnocoというかわいらしい名前は、えり奈さんのお母様がかつて営んでいた店名なのだとか。“引き継いでいく”という想いで同じ屋号に選び、偶然にもこの建物「のこぎり屋根」の“のこ”でもありました。
実はお母様のお店は生地を扱う布屋さんで、お父様も繊維関係のお仕事。不思議とえり奈さんも、かつて繊維の街だった青梅へ導かれ、その工場だった場所で自分の人生を紡いでいます。
場所柄、週末は奥多摩からの帰り道やツーリング中のお客さんで混みあうため、平日が狙い目です。
御岳にほど近く、緑あふれるこの環境がとても気に入っているというえり奈さん。青梅駅辺りとくらべてもまた空気が違うといいます。
清涼な空間のもと、今日もカラダをつくる糧に向き合う、その丁寧なてしごとを味わいにぜひ立ち寄ってみてください。
※表示価格は税抜価格です。
(撮影:橘内あや「Atelier LUNA」)
BAKERY&CAFÉ noco
電話: 0428-27-5456
住所: 青梅市柚木町2-332-2
営業時間:11:00-16:00
定休日: 火曜・水曜
席数: 8席
最寄駅: 二俣尾駅南口から徒歩15分程度
駐車場: 店舗手前に3台、近くに観光の方が自由に使える「梅の里無料駐車場」があります
【バス利用】
青梅駅(交番前バス停より)「梅76丙 吉野行」or「梅01青梅駅前」乗車20分→「奥多摩橋」停留所下車、徒歩2分
WEB: http://noco.wpblog.jp/