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御岳山のケーブルカーを降りて、鳥居を抜け杉林を通り過ぎ、宿坊集落に入ってまもなくの場所にあるうつぼや荘。
御岳山ビジターセンターのすぐ近くに位置します。
玄関はまるで田舎に帰ってきたかのようなおもむき、日当たりのよい縁側、障子で区切られた純和風の広い建物。いまは珍しい砂壁の廊下も昭和レトロ感たっぷりです。
昔ながらの日本家屋の造りで、気持ちよくすみずみまで清掃されていて、陽のひかりが差しこむ畳部屋に思わずごろんとカラダを伸ばします。鳥の声が響き渡る山の静けさに、時間の流れがゆっくりと流れていくような心地よさを味わえます。
チェックインよりかなり早い時間だったのですが、挨拶に立ち寄ると「荷物お預かりしましょうか?」とこころよく預かっていただけました。
お風呂は24時間いつでも入れるジャグジー風呂。全身をぐーんと伸ばせる大きなお風呂で、疲れのたまった脚をジェットバスの水流が癒してくれます。
ここは体育館もすぐ目の前(御岳ビジターセンター)にあり、部活の合宿や研修会などにもよく利用されているそうです。
夕食は山の恵みをたっぷりいただく豪華なお膳。
食材の中には、御師のご主人みずから無農薬で育てたお野菜も。昔から山岳信仰の対象であった御岳山、そのご神域内に畑があり、そこで育った特別なお野菜たちです。
そして川マスの塩焼きに、ちょっと感激!
ちょうどよい塩加減とパリッと香ばしい皮の触感、そして中はしっとりふっくら。絶妙な焼き加減です。
こちらも釣り好きのご主人が忙しい合間をぬって客人をもてなすため多摩川渓谷で釣り上げてきたものです。
そして御岳山名物の刺身こんにゃく、これが想像以上に美味しくて!まず口あたりが全く違います。とろっとした触感でなめらかに口どけていきます。
こんにゃくが”ごちそう級”に昇格した逸品、これは是非味わっていただきたいです。
一般的には、こんにゃく芋を乾燥させた粉を使って製造されているのですが、御岳山では生のこんにゃく芋をすりおろし、火を入れながら練り上げます。宿坊によって火の入れ加減や混ぜ具合にこだわりがあり、それぞれ少しずつ個性が出るそうです。
料亭のように上品で繊細な品々を堪能しながら、女将さんの料理に腕前に感嘆していたのですが、訊くと「料理は苦手なの」と意外なお返事。女将さんは奥多摩出身で、職場でご主人と出会い御岳山にお嫁に来ました。
「普通の家で育ったから、最初は何にも分からなくて大変だった」と爽やかな笑顔でお話されていましたが、家族の毎日の夕ご飯だけでもアタマが痛いのに、ここまでのおもてなし料理を用意する、どれほどの努力と苦労かと想像します。
※料理内容は季節により変わります
御師であるご主人の靭矢正さん。御岳山観光協会の会長をされています。御岳山の取材や問い合わせの窓口として、いつも様々な人達がうつぼや荘に訪れます。その合間に神事や役員会や畑仕事や釣り…とてもお忙しそうな毎日。
実は正さん、御岳山宿坊“南山荘”の片柳家が生家です。次男だったので自身が御師を継ぐことはないと考えていたそうですが、跡取りがいなかった靭矢家を存続するために養子に入り御師を継ぐことに。定年退職するまでふもとの農協勤めを続けながら、御師の仕事も担ってきました。
靭矢家の跡継ぎの息子さんは、ふもとに暮らしながら小学校教師としてお仕事されています。子育て中のパパでもありながら、最近御師としてデビューしたばかりという若手御師さんです。江戸時代から脈々と続いてきた御岳山集落の歴史と暮らしが、こうして継がれていきます。
御岳山の集落に暮らす方々は、お互いのことを「屋号」で呼ぶ習慣があり、うつぼや荘の屋号は“表”です。これはうつぼや荘が、御師集落の一番初めの入り口に位置することから「表」とつけられたのだとか。
集落の方が「おもて」といったら、それはうつぼや荘のこと。これを知っていたらあなたも御岳山ツウです。
取材の日はちょうど「おいぬ講」という、宿坊に分社されている神殿で祝詞をあげる神事がうつぼや荘で行われ、各宿坊の御師さん達が集まってきました。ひと月かふた月に一度、こうして御岳山の各宿坊を順番に巡っていきます。
神事のあとは、必ず”直会(なおらい)”があります。これは神事の際に神がかった身体を、お酒を飲むことで人間界に戻すための大事な方法だそうです。
少なくとも江戸時代から脈々と世襲によって継がれてきた御師集落。
それから時代も文化も大きく変わりましたが、時代の流れにうまく合わせながら、ふもとから遠く隔たった天空のご神域で、武蔵御嶽神社と伝統を守り続けてきた御岳山集落は、世界文化遺産に登録されてもおかしくない稀有な場所です。
宿坊に宿泊することで、そこで日々の営みを続ける貴重な方々にふれあい、その暮らしぶりや文化に触れる、きっと価値ある体験ができるはずです。
宿泊料金(1泊2食付き)
大人 ¥8,800/人 ※年末年始のみ変動
小学生 ¥7,040
幼児 (食事・布団あり)¥5,500 (食事・布団なし) 無料
素泊まり
なし
団体利用
大人 ~15名
子供 ~30名
乳幼児連れ情報
離乳食持ち込みOK / 子供用椅子なし / ベビーベッドなし
設備
大広間 / Wi-fi / 保温ポット / お茶セット / アイロン(貸出) / 石油ファンヒーター / ホワイトボード / DVDデッキ(貸出) / コピー機 / 宅配便
アメニティ
ハミガキセット / カミソリ / タオル / バスタオル / 浴衣
浴室
ボディーソープ / リンスインシャンプー / ドライヤー
うつぼや荘 基本情報
住所 | 東京都青梅市御岳山50 |
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ケーブルカー御岳山駅から | 徒歩8分 |
電話 | 0428-78-8462 |
チェックイン | 15:00 |
チェックアウト | 10:00 |
宿泊可能人数 | 2名からOK |
現地でのお支払い | 現金/ PayPay |
暖房費など | なし |
予約方法 | 電話 10:00~20:00 |
※掲載内容は変更の可能性があります。(2021年5月現在)
撮影・執筆:西村 純子
OMEGOCOTI代表 結婚・出産をきっかけに地元青梅に戻ってきた一児の母。それまで食品関係の仕事に携わっていたが、産後に挑戦してみたボディケア業にはまり、自宅でアロマトリートメント店を開業。地元のお客さんたちとの雑談や子育て経験の中で、地域のためのWEBサイトの必要性を感じ、OMEGOCOTIを立ち上げる。WEB関係は詳しくないため専門知識を持つママさんたちに助けられながら、本業と子育ての傍ら手探りで運営中。いまだに書くことは得意ではなく、人様のカラダを癒す方が天職と感じている。
https://izumi-aroma.net/
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